
電気化学測定装置(ポテンショスタット・ガルバノスタット)を導入いただきました。
インタビュー : 2025年11月7日
北見工業大学 植西 徹 准教授
資源循環システム研究室
研究テーマ
・二酸化炭素、メタンの回収技術に関する研究
・二酸化炭素、メタンの資源化技術に関する研究
・寒冷地向け低コスト燃料電池の開発
研究室ホームページ
研究室紹介
北見工業大学エネルギー総合工学コース・植西徹准教授の研究室では、カーボンニュートラルの実現に向けた温室効果ガスの回収・資源化・利用技術を中心に研究を進めています。
二酸化炭素を“出さない”技術として水素エネルギー利用(燃料電池)の高効率化、そして“出てしまった”二酸化炭素やメタンを回収し、燃料やプラスチックなどに転換する技術開発に取り組んでいます。これらの研究では触媒や電気化学反応の解析が不可欠であり、研究室の中核技術となっています。
Q:現在の研究テーマについて教えてください。
A:メインはカーボンニュートラルに関する研究です。
二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスを「出さない」か、「出てしまったものを回収して資源化する」か、この2方向の技術を研究しています。
・出さない技術:水素エネルギー、燃料電池、触媒反応による高効率化
・出たガスの資源化:CO₂やメタンを回収し、燃料やプラスチックへ変換する電気化学・触媒技術の開発
これらの研究には電気化学解析が深く関わってきます。
Q:研究の原点はどこにありますか?
A:私は元々機械系で、車のエンジンへの憧れから企業に入りました。
そこから排ガス浄化、触媒、電気化学へと進み、その技術が評価されて燃料電池・CO₂資源化へと広がっていきました。 結果的に、自分の専門である「触媒」「電気化学」「吸着」の技術が、ずっと軸になっているという感じです。
Q:企業での研究から大学へ移られたきっかけは?
A:もともと大学教員になりたいという思いがありましたので、企業で研究的な仕事を積み重ねながら、大学へ戻るチャンスを待っていました。その後企業の研究所に所属して研究に集中できたこともあり、そこから大学への道が開けました。
企業時代には、限られた予算のなかで装置を自作したり、既存の装置を改良したりしながら研究を進めてきた経験があり、その姿勢は現在の研究室文化にも引き継がれています。
研究室モットー
Q:研究室の様子や、運営について教えてください。
A:現在は13名、来年度は15名になる予定です。
大学院生にも指導を手伝ってもらいながら、研究テーマごとに学生自身が主体的に実験計画を立てられるようにしています。 研究室内にはスケジュール管理の仕組みがあり、どの時間帯にどの実験を行うかが共有されています。
学生への指導においてまず アナログの理解を深めることを重視しています。 自動化された装置だけに頼ってしまうと、不具合の原因に気づけなかったり、根本原理を理解しないまま研究が進んでしまう恐れがあるためです。
新しい実験に取り組む際には、必ず最初の数回は一緒に作業し、実際の操作や考え方を共有します。また、研究の疑問点や不安な点をすぐに相談できる環境づくりを心がけ、学生が主体的に実験を進められるようサポートしています。
「アナログを理解したうえでデジタルを活かす」
研究室では、基本的に手動のアナログ的な計測機器を用いて原理を体験し、実験感覚と基礎理解を身につけることから始め、そのうえで高度に自動化された装置を用いたデータ取得へと段階的に進む指導をされています。
必要に応じて研究装置を自作することもあり、学生と密にコミュニケーションを取りながら教育に重きを置いた研究室運営を行っています。
こうした環境により、学生はものづくりの感覚を持ちながら専門的な研究スキルを身につけることができます。
導入機材
Q:今回ポテンショスタットを導入した理由は何でしょうか?
A:研究に必要な電気化学解析の精度を上げるためです。 特に、
・メタン・CO₂を燃料へ変換する電気化学反応の解析
・電気分解プロセスのEIS解析
・燃料電池の出力評価(高電流域までの計測) といった目的でポテンショスタットを活用しています。
自作装置でも対応していましたが、導入したことで高電流域(1A → 2A以上)まで測れるようになり、学生も非常に喜んでいます。
北海道ならではの研究
Q:北見の地域性に係る研究テーマについて教えてください。
A: 北海道は冬季の暖房利用が多く、また温泉や酪農も多い場所です。
そのため、牛舎の低濃度メタン回収技術、メタンを燃料等へ転換する電気化学技術、回収ガスをJクレジットにつなげる経済モデルの構築など、排出されたメタン・CO₂の実証研究が非常にやりやすい環境です。
Q:酪農向けメタン回収技術とはどんなものですか?
A:牛舎内の空気から低濃度メタンを回収し、それを燃料化する技術です。
牛のゲップのメタンは濃度が高いものの、空間に広がるとすぐにPPMオーダーまで薄まります。
そのため「低濃度メタンをどう効率良く集めるか」が大きな課題です。
最終的には、回収したメタンにより農家が炭素クレジット収入を得られる仕組みにし、酪農の経営安定にも寄与できると考えています。
温泉地や酪農の多い地域ではメタンガスが多く発生する特徴があります。
植西研究室では、この地域特性を活かし、
・牛舎内の低濃度メタンを効率的に回収する技術
・回収したメタンに価値を持たせ、酪農家が「炭素クレジット」を収益源として活用する仕組み
・北海道国立大学機構(北見工大・帯広畜大・小樽商科大)と連携したJ-クレジットモデルの実証
など、北海道だからこそ成立するカーボンリサイクル研究に挑んでいます。
最後に
Q:今後の研究の方向性を教えてください。
A:社会的な課題である「CO₂排出」「メタン排出」を、逆に資源化・価値化する研究を進め、地域共生カーボンリサイクルシステムとして実装したいと考えています。
特に酪農との連携は社会的インパクトが大きく、大学・企業・地域を巻き込んだプロジェクトに育てていきたいです。
今回のインタビューでは、研究への情熱、教育への深いこだわり、そして北海道という地域性を活かした社会実装のビジョンまで、幅広いお話を伺うことができました。
植西先生、貴重なお時間と興味深いお話を誠にありがとうございました。


