レーザの基本原理

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レーザの基本原理


1-1 レーザの有効性


レーザは、計測に革命的な手段をもたらしているとよくいわれる。
なぜ計測にとってレーザは革命的なのか、新しい計測手法にとってなぜレーザでならなくてはならないのかからスタートする。
まず、レーザの基本的な特性としては次の6つがある。

  1. 単色性
  2. 可干渉性
  3. 偏光の純粋性
  4. 高指向性
  5. 高収束性
  6. 波長可変性

レーザを使った計測装置のアプリケーションのひとつにエンジンの燃焼解析がある。
図1は典型的な工学過程として、燃焼現象における諸パラメータ相互関連を示す模式図である。
燃焼過程は、燃料と空気の混合、流動、相変化、反応、伝熱、熱放射、排気といった素過程から構成される大きなシステムである。
その燃焼過程を制御出来れば理想であるが、まずは高効率で有害排気物の少ない燃焼を実現させたい。
そのためには、着火前の燃料の混合比率、空気の流れ、気化燃料の挙動、着火時の燃料の比率と分布、圧力、温度、それに火炎、燃焼ガス、燃焼過程の濃度分布など空間的、時間的な変化の計測が必要となる。

このような目的を満たす計測法に求められる条件とは

  1. 非接触計測
  2. 時間分解能が高く、応答性に優れていること
  3. 空間分解能が高く、局所情報が得られること


これらの条件を満たす計測手法として、レーザが用いられるのである。

1-2レーザの基本原理


この事をもう少し深く説明する。
光が物質に入射すると、通常はその強度を減少する。光吸収が起きるからである。
誘導放出があると、入射光が減少せずに増大する。図5はその関係である。
入射光の強さをI0、物質通過後の強さをI、通過する長さをxとすると吸収の場合は

の関係がある。aは吸収係数と呼ばれる物質特有の値をもつ、また誘導放出のある場合は、

の関係になって、この場合aは負の吸収係数、通常利得係数と呼ばれる。


レーザ発振が継続的に起きるためには、誘導放出が継続的に起きるような状態が作られなければならない。
このような状態の事を反転分布という。
下図の準位1及び2にある原子数をN1,N2とし、統計重率をg1, g2とすると、それぞれの準位にある原子数は熱平衡状態では次式の関係、つまりボルツマン分布をとる。

kはBoltzman定数、k=1.38×10-23 j/k である。
統計重率を便宜上省いた形にすると(4)式は下記の通りになり、

ここでE2 > E1であるので通常はT>0であるので、N1>N2が成り立つ。
つまり、下の準位の原子数の方が上の準位の原子数より多いことになる。
この場合は吸収が放出より大きく、全体としては光の吸収が観測される。
また温度が高くなり無限大になるとN1 = N2となるが、N1 < N2の関係を満足させるためにはT<0でなければならない。
この状態を反転分布状態といい、負温度状態という。
反転分布状態の物質中に光が通過すると光増幅が起きるのである。
1924年にトールマン(Tolman)がこの事を指摘している。
この誘導放出発見直後に米国コロンビア大学のタウンズ(Towns)、メリーランド大学のウェーバ(J.Weber)それにソ連のレベデフ研究所と3カ所の大学、研究所で独立にほとんど同様な研究が行われていたという。
電磁波を増幅するという報告は上記タウンズらが1954年アンモニア分子を使った23870 MHzのマイクロ波の発振に成功した報告である。
これがレーザの前身であるメーザの誕生である。
メーザの述語は 「Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation」である。


現在では光共振器には、空洞共振器の代わりに2枚の平行平面鏡からなるファブリーペロー型のものが多い。
タウンズらはこの考えを発展させて光を効果的に閉じこめる光共振器を作り、共振器中の適当な物質を光励起することにより、その物質の2準位間での反転分布を生じさせ、光発振増幅を行わせるための諸条件についての解析を行い、気体分子や数々の結晶を用いる研究が開始された。
光学領域のこの分子増幅は、1960年代前半には光メーザと呼ばれていたが、まもなくレーザ(Laser)と呼ばれるようになった。
誘導放出による光の増幅( Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation )である。

レーザの最初の発振はルビーを使ったもので1cm3のルビーの両端面を光学的に研磨し銀蒸着を行って、強いフラッシュランプで励起する実験を繰り返した。
その結果、一方の銀蒸着面の前方の壁に赤く輝くスポットが見られた。
これは強力な光パルスの放出を示すものであった。
この光のスペクトルの幅の狭いことや指向性のよいことなどから、この光が地上で初めて見られたレーザ光パルスであることが確認された(1960年)。

参考文献

 

  • 大澤 敏彦 , 小保方富夫:“レーザ計測”(裳華房 ,1994)
  • 片山 幹郎:“レーザと化学”(共立出版,1985)


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